VR活用事例

VRで体感する日本の伝統芸能

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 2020年、コロナ渦において、私たちは生活様式の変更を余儀なくされました。家族や友人との集まり、コンサート、イベント、仕事帰りに同僚と集まるといったことも安易に出来なくなり、旅行などの余暇においても行動計画の見直しが必要になったのです。

 幸い、VRテクノロジーを用いて、友人と交流したり、世界の地を訪れたりと、日常生活から得られる幸福度を下げることなく日常を送れるという選択肢も残されており、VRの新しい利点と潜在的なアプリケーションの追求が改めてクローズアップされ、生活に没入型テクノロジーを採用する流れになってきています。VR活用は、いつ何時も人との繋がりを持続させ、また感情的なストレスを軽減させるのに、とても役立ちます。

 さて、本題の伝統芸能ですが、日本には、未来に伝承していかなくてはならない伝統芸能が存在します。

 今回は、世界情勢の影響を受けることなく、伝承可能なVR活用について見ていきます。

おうちで「体感!日本の伝統芸能」VR

 2020年3月10日~5月24日まで開催予定だった、ユネスコ無形文化遺産 特別展 日本の伝統芸能ですが、新型コロナウイルス感染拡大のため、中止となりました。会場へ足を運ぶことは出来なくなったものの、代わりに、その様子を開設映像と共にVRで視聴することが可能です。

 歌舞伎の舞台に立ったり、華やかな衣裳を好きなだけ眺めたりでき、まるで場内を実際に歩いているかのような気分に浸れ、360度ぐるりと鑑賞出来ます。

音のVR

https://time-space.kddi.com/otonovr/

 国立劇場とKDDIがタッグを組み、先進技術を用いた新しい文化発信を目指す試みとして、現存する世界最古の管絃楽である雅楽と、ヨーロッパ文化を代表するクラシックオーケストラの共演をVRで実現しました。音のVRは、KDDI総合研究所が開発した5G時代の独自の技術です。

 音のVRで共演を果たした伶楽舎と新日本フィルハーモニー交響楽団。雅楽を演奏する伶楽舎は、現代に伝えられている古典作品だけでなく、歴史の過程で失われた曲の復元や、新曲を委嘱制作・演奏して研究と普及に務め、クラシックオーケストラを演奏する新日本フィルハーモニー交響楽団は、1972年に指揮者・小澤征爾を中心に自主運営のオーケストラとして生まれ、世界的指揮者との共演に留まらず、地域に根ざした演奏活動を行っています。

 日本の伝統芸能を支える国立劇場の舞台上で、歴史、文化的背景、奏法、音色の異なる東洋と西洋のオーケストラの融合を、360度動画で配信するのは、世界初の試みです。

ステージ奥から客席への視点
https://tspace-prod.s3.amazonaws.com/articles/15dc5003e25b4374f4a437c517c5b699.jpg (引用元)
視点を180度反転させたもの。
https://tspace-prod.s3.amazonaws.com/articles/a33b206abd8dd23716f5679c5728a818.jpg (引用元)

 特徴としては、各楽器の音量の差が大きいため、中央の360度マイク以外に、一部の楽器へ個別にマイクを立てました。コンテンツ制作の際には、これらを一部ミックスさせることで、各楽器がより際立つ音に仕上がることに注力しています。

 スマホやタブレットで専用アプリ「新音楽視聴体験 音のVR」を用いて、演奏中の好きなパートを画面上でピンチアウト(拡大)すると、映像と同時に、その歌声や楽器の音色に寄って視聴することが出来るというもの。スマホ操作で音に触れられるとは、あまり類を見ない試みです。視聴者自身が好みの楽器の音色をじっくり聴くことが出来ます。まるで演奏している舞台上を自由に移動しているかのように、雅楽とオーケストラのアンサンブルな音色を楽しめます。

 歌舞伎を始めとする古典芸能は同じ演目を幾度となく上演しますが、その時その時で感じ方に変化が生じ、新しい発見があります。音のVRでは、思い思いに音を楽しめ、そういった点では同じような感覚をVRにて疑似的に体感出来ます。

 国立劇場の「伝統をつないでいきたい」という思いと、KDDIの使命である通信力の「人々の命を、暮らしを、心をつなぐ」という思いが共鳴し、今回の企画の実現に至りました。次世代に向けた文化発信の挑戦は今後も続きますが、これをきっかけに、より多くの人々に音楽や伝統芸能の興味を持ってもらいたいという願いが込められています。

 オーケストラと雅楽では曲のテンポとリズムに違いがあり、ぴったりと合わせることは難しいものの、また一味違った新たな世界観を創り出しています。

バーチャル修学旅行360

 旅行業界大手のJTBは、デジタル技術を駆使し、ニューノーマル時代における子供たちの思い出作りや学びの機会保証、および観光事業者のサービス提供機会創出を実現するためのプログラム、リアル+VR 新感覚体験型旅行「バーチャル修学旅行360」を開発し、全国の学校からの予約を受け付けています。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、修学旅行の中止が全国の学校で相次ぎ、企画されたバーチャル修学旅行360は、舞妓らとのビデオ通話や伝統工芸体験も織り交ぜ、子どもたちの思い出作りのサポートを目的に、開発されました。

 VR映像の視聴や、ビデオ通話に必要な機器をレンタルし、子どもたちは教室や体育館で修学旅行が楽しめます。

 VR体験では、通常は立ち入ることが難しい場所や人の目で見ることが難しい角度からの映像、神社仏閣などの映像を360度様々な角度から視聴でき、まるでその場に居るかのような気分が味わえます。旅行中に出会うはずだった舞妓や旅館の女将、バスガイドら、タクシー運転手と、ビデオ通話で交流する場も設定されています。

 伝統工芸や文化体験では、子供たちが京焼・清水焼や、漆器、扇子、京友禅、友禅染、着物、能に触れる機会を提供。オンライン指導か、実際にインストラクターを派遣するかは、学校側の条件や感染状況に応じて決められます。また、お土産の販売もあり、旅行気分の演出も万全です。旅行先の名産品を使用したお弁当の販売、記念写真撮影など、学校のご要望に応じてアレンジします。

 第1弾「京都・奈良編」は、2020年秋から開始され、その後、旅先のエリアを拡大していくとのこと。  

Profound Tourism オンライン

 2020年9月10日、凸版印刷株式会社は、トッパングループで旅行事業を展開する株式会社トッパントラベルサービスと共同で、コロナ禍における新しい体験価値の提供、企業研修などでの活用を目指し、Profound Tourism オンラインの販売を開始しました。

 先行販売プログラムは、「奈良・唐招提寺のVR拝観」と「東京・浮世絵工房のバーチャル見学」の2つです。

 文化財VRなどを用いたバーチャル体験や、世界遺産に登録されている寺院の僧侶や熟練の伝統工芸士などの文化継承者達との交流を組み合わせた、臨場感溢れるオンラインツアーです。

 Web会議システムによる配信を通じ、利用者が複数の拠点に居ながらにして、旅行気分を味わえます。

 現在、日本では観光立国の実現に向け、長い歴史で培われた伝統や文化といった情報の発信の強化が進められています。食事や宿泊などのホスピタリティだけでなく、日本の伝統文化の魅力をコンテンツ化させ、世界に向け発信することが重要な社会課題です。また、長引く新型コロナウイルス感染拡大の影響で、地域間移動を伴う旅行は制限されており、現地を訪れることなく、場所や文化を疑似体験可能な新しい形の仕組みが求められています。

 VRコンテンツの構成と見所は、VRスタジオ中継、オンライン対話、ワークショップです。

 3面カーブ式スクリーンを使用した奥行き感あるスタジオ中継で、VRを体験出来ます。日本文化の世界に浸る没入体験と、現地に居るかのような臨場感を味わえます。

 世界遺産に登録されている寺院の僧侶や熟練の伝統工芸士などの文化継承者とオンライン上で対話が可能です。企業研修講師による司会進行のもと、グループディスカッションなどの簡単なワークショップを行い、伝統文化の世界と参加者の日常を関連付けます。

「東京・浮世絵工房のバーチャル見学」の様子。
https://www.toppan.co.jp/news/2020/09/sto3as0000003wa2-img/TOPPAN_200910_img7.jpg (引用元)

 世界文化遺産、古都奈良の文化財を構成する寺院「唐招提寺」のVR拝観や、創業160年の「高橋工房」で、創業以来変わらぬ技法で伝統木版画の制作を行う、江戸時代より代々続く浮世絵の摺工房のバーチャル見学が可能です。

 今後、「京都・町家での洛中洛外図屏風デジタル鑑賞」や「東京・禅寺でオンライン座禅」など、新規ツアーの開発や販売が予定されています。

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